テイもケイも古い友人である。

ケイは、なにか常にテイを意識している。

テイは、青じそのドレッシングのような風合い。

ケイは、缶づめのパイナップルのような風ぼう。

テイと私、と、ケイと私、では、だいぶ違う。

その理由のひとつに、ケイのなかの意識と言うものがあると思う。

ケイは、テイを見ている。

ケイは、私とテイの、超音波のような会話に共鳴しない。

それがわざとなのか、ほんとうに響いていないのかはわからない。

最近、テイとケイの仲があまりよくない。

理由はものすごく単純明快。

ケイが私に何も言わないのがいい証拠。

私はどちらかというとテイよりもケイの心中の方がよくわかる。

ケイもそのことはわかっているはず。

けれど、言わない理由がある。

私に言っても仕方がないのだ。

私は、ケイの気持ちがよくわかるけれど、私とケイには決定的な違いがある。

ケイは、そこを避けているのだ。

その避けられた部分が、私とテイの交叉点。

ケイが私を直視しない理由もわかっている。

私を合コンに誘わない理由も、誘うときに必ず含まれる条件も、わかっている。

一度ひやかしに行ってやろうかとも思ったのだが、余計な力使いたくないのでやめた。

来月、テイと、同じく古い友人のエスと三人で会う。

自然と、ケイのことは話題にならなかった。

私とエスの交流は少ない。

それは、私がエスに距離を置いているから。

距離、というか、交叉する場所がないだけのことなのだけれども。

私はテイの潔さとか汚さが好きだ。

見習うべきことは多い。

けれど、私はテイになりたいとは思わない。

というか、私は誰かになりたいだとか、誰かと競争したりするのが大嫌いだ。

エスに会う理由はただひとつ、久々で懐かしいから。

正直、会ってもあまり経験値は上がらないと思う。

そのことを、まったく別の種類の友人エヌに話すと、彼女はこう言った。

「世の中、打算的でナンボのもんでしょ。そうやって賢く生きて行かないと。あたしは計算できないばかな女になりたくない」

エヌといいテイといい、回転のいい頭脳が近くにあるのは愉しい。

なにより、彼女らのその眼力で見極められた自分がここに居ることが痛快だ。

かわいそうに、ケイは妬む暇を欲に充てればよかったのだ。

けれど、わざわざ言わない。

これが、テイやエヌに教わった算術。

三十路目前の働く女は、強い。

コメント

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索